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事例52:ITサービス業の中小企業E社の賞与見直し・猶予の交渉: 事業再生シリーズ:No.207

背景

E社は、30名規模のITサービスを提供している中小企業です。コロナ禍により新規案件の獲得が困難になり、売上が大幅に減少しました。それに伴い、キャッシュフローが悪化し、特に年末に予定されていた賞与の支給が厳しい状況に追い込まれました。このままでは賞与を支払うと資金繰りが行き詰まり、企業の存続にも影響が出る危機的な状況にありました。

問題点:

・新規プロジェクトの停止により売上が減少し、資金繰りが悪化。

・年末の賞与支給が困難な状況。

・賞与の見直しや猶予が必要だが、従業員の不満を招かないようにする必要があった。

対策:従業員との賞与見直し・猶予の交渉

1.経営状況の説明

・E社の社長は、従業員全員に対して、現在の経営状況をオープンに説明しました。コロナ禍による新規案件の減少や、売上減少がキャッシュフローにどのように影響しているか、さらに賞与を予定通り支払うと企業の存続が危ぶまれる状況にあることを率直に伝えました。

・この説明には、具体的な数字や経営計画を示すことで、従業員に企業の現状をしっかり理解してもらうことを目的としました。

2.具体的な提案

・E社は、賞与を全額支給することは困難であるが、賞与支給を半年後に猶予することを提案しました。猶予期間中、企業の経営を立て直すために努力し、半年後には賞与を支払うことを約束しました。

・また、賞与を分割払いにすることや、支払いの一部を先に支給するなどの柔軟な選択肢も提案しました。

3.従業員との協議

・経営者は従業員との個別面談を実施し、各従業員の意見や不安を聞きながら、見直し案について協議を進めました。従業員にとっても生活に直結する問題であるため、個別の状況に応じた配慮も行いました。

・社長は「一時的な猶予であり、経営が回復次第、必ず全額を支払う」というメッセージを繰り返し強調しました。

4.従業員の合意

・従業員全員が、E社の存続を第一に考え、提案された賞与の猶予に同意しました。多くの従業員は、E社の誠実な対応と透明な説明を評価し、会社と共に経営危機を乗り越えたいという意識を持って協力しました。

5.猶予期間中の経営改善

・E社は猶予期間中、新しいプロジェクトの受注やコスト削減に積極的に取り組み、売上回復を図りました。また、定期的に従業員に経営の進捗状況を報告し、安心感を与え続けました。

6.半年後の結果

・半年後、E社は売上が回復し、予定通り賞与の全額を従業員に支払いました。従業員との信頼関係は強化され、企業全体の士気も向上。企業は倒産の危機を回避し、事業を安定的に継続することができました。

成果:

・賞与を猶予することで、短期的な資金繰りを改善し、企業存続の危機を回避。

・従業員と経営者の信頼関係を保ちながら、柔軟な対応で従業員全員の同意を得ることに成功。

・経営が回復したことで、賞与は全額支給され、従業員の士気が高まり、長期的な企業の安定につながりました。

この事例のポイント

・透明なコミュニケーション: 経営者が経営状況をオープンに説明し、従業員が企業の危機的状況を正しく理解できるように努めたことが、信頼関係を築く基盤となりました。

・柔軟な対応: 賞与の猶予や分割支払いなど、従業員にとって負担が少ない提案を行い、個別のニーズに応じた対応をしたことで、従業員の理解と協力を得ることができました。

・定期的なフォローアップ: 猶予期間中に経営状況の進捗を定期的に報告し、従業員に安心感を与え続けたことが、全員のモチベーション維持に繋がりました。

この事例は、企業が厳しい経営状況に直面した際、従業員との誠実な対話と柔軟な対応を通じて給与や賞与の見直し・猶予を行うことで、資金繰りを改善し、倒産の危機を回避する手段として有効であることを示しています。

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